1966年の深海掘削計画開始時は、まだ現在のように世界の海底地形図は完成しておらず、プレートテクトニクス理論で地球の大陸の動きは説明されていませんでした。では、どのように考えられていたかと言うと、プレートテクトニクスと対比して、地向斜という概念で説明されていました。
地向斜という概念では、現代でいう所の海盆や大陸縁辺部に、広範囲に地層が堆積して、その地層の重みによりその場所が沈降することで、地層が数キロにわたり分厚く堆積し、その後、堆積場所の中心部にマグマが貫入して造山運動が起こり、大きな山脈となるという理論です。例えば、アメリカのアパラチア山脈など、地層の厚さが1,000kmを超えるような場所の観察結果に基づき理解されてきました。
地向斜とプレートテクトニクスの概念の大きな違いは、地向斜の考え方では大陸が水平方向には大きく動かず、基本的には上下に動くという考えです。一方で、プレートテクトニクスでは、大陸は水平方向に長い時間をかけて1,000km以上も動き、海の形は変わり、プレート同士が押し合うことで地面が盛り上がることが造山運動であり、山脈形成であるという考え方です。
ここで、ウェゲナーの大陸移動説で提唱された、アメリカ大陸とアフリカ大陸の大西洋に面した海岸線が非常によく似ている形をしていることに遡ります。アメリカ大陸とアフリカ大陸の海岸線がなぜ似たような形なのでしょうか?その理由として、元々は2つの大陸はつながっていたが、どんどん離れていったからであると考えた時、それを証明するには、両大陸の間にある大西洋の海底が拡大していることを示せば良いわけです。
それを実現したのが、深海掘削計画(DSDP)第3次研究航海(Leg.3)です。この航海では、大西洋の南アメリカから南アフリカまでの深海底掘削が行われました。
掘削地点の地図(Hole 14〜21)
深海掘削計画(DSDP)第3次研究航海レポートから緯度、経度を引用
地図中のマークをクリックすると掘削番号他情報が表示されます。
この掘削航海では、大西洋の深海底10カ所を掘削し、得られた地層が堆積した年代を丹念に調査していきました。この地層の年代を確定した方法は、地層中に含まれている微化石と呼ばれる、有孔虫の化石です。その結果、大西洋の中央部に存在する海嶺を中心に、そこから離れるに従って徐々に古い化石が海底表面に現れることがわかってきました。
中央海嶺から離れるほど古い地層が分布(数字は上記地図の掘削地点を示す)
ブラードが1965年に発表した大西洋誕生以前の大陸の位置。
赤い部分が重複部分で青い部分は隙間を示す。(Bullard, S.E., et al. (1965)を引用)
斎藤コレクション:東北大学に保管されている深海掘削計画(DSDP)第3次研究航海で得られた有孔虫サンプル(赤および青で囲んだサンプル。右側は有孔虫の拡大写真)。
参考文献:
Bullard, S.E., et al., 1965, The fit of the continents around the Atlantic, vol. 258, No. 1088, A Symposium on Continental Drift (Oct. 28, 1965),Volume 258Issue 1088 pp. 41-51 , Royal Society.
Hsü, K.(高柳洋吉訳), 1992, 地球科学に革命を起こした船. 東海大学出版会.
Deep Sea Drilling Program (深海掘削計画)第3次研究航海報告書